飲食店の咳

飲食店に入る。カウンターとテーブルだけの小さな店だ。

注文をし、スマホなどをいじって食事が出てくるのを待っていると、カウンター奥で、激しく咳き込む音がする。見ると、料理人から発せられる音だ。料理人はマスクもしていない。

こういう場面に遭遇するたび(それが良くあるのだが)店から出たくなる。なんと不衛生なことだろう。生野菜に風邪の菌がついていそうだし、それ以前にこの広くない空間に菌が舞っているだろう。それに、風邪になると味覚が鈍くなったり、歪んだりして、食べる料理も美味しくなさそうだ。

出て行きたい・・・!

しかし、である。自営業であるはずで、風邪の一つや二つで休んでいては生活が立ち行かなくなるのかもしれない。そんな咳くらいで非難する気持ちになる自分の心が狭いのかもしれない。

・・・といったことが頭の中でぐるぐると駆け巡る。

これが美容室の場合、もっと悲惨だ。

私の髪を切ってくれる美容師は、いい人なのだが、毎年冬場、必ず風邪をひく。そしてマスクをしない。髪を切りながら、至近距離で咳き込むのである。暖房の生暖かい空気の中で、至近距離で咳き込まれるこのホラー。

店を閉めろ、とは言わない。
せめて、マスクをしてくれ。