失われた時を求めて

 岩波から刊行中の「失われた時を求めて」を読んでいる。20世紀最高の文学と言われることも多いが、それは確かに本当だと思う。

 

 この小説は、まず少年の日々から始まる。コンブレーでの少年の日々。周囲の風景がどんなだったか、家族の者たちがどんなだったか。それが非常に解像度の高い描写で紡がれていく。それを読んでいると、自分の子供の頃の記憶が読み覚まされていく。自分が子供の時の家族はこうだった、夕焼けの色はあんなだったとか・・・。それがほろほろと呼び覚まされていく快楽がプルーストの小説にはある。

 

 プルーストを読む行為で、自分の感受性が高まっていく気がする。そんな力を持っている小説である。

 現在、最新訳では岩波文庫光文社古典新訳文庫が同時刊行中だが、ほぼペースを緩めず、また翻訳基準がプルーストの文章の語順・長さに沿ったものになっているから、岩波文庫版をおすすめする。